【感想】漫画『進撃の巨人』ネタバレありまくり

今っさらですが、『進撃の巨人』全34巻を読破しました。

これほど読んでいてツライ漫画は初めて。

最初から最後までとにかく人が死にまくるし、正義はないし、救いはないしで、とにかくツライ漫画でした。

そしていろいろ考えさせられた漫画。

進撃の巨人』について感想をまとめましたので、興味ある方はどうぞ最後までお付き合いください。

 

注意:包み隠さずネタバレしておりますので、未読の方はスルーしましょう。

 

あらすじ

突如出現した「巨人」により人類は滅亡の淵に立たされた。生き残った人類は巨大な三重の城壁を築き、その内側で100年間、わずかばかりの安寧のひとときを過ごしていた。エレン・イェーガーは壁の中での生活に疑問を感じ、壁の外の世界への憧れとそれを阻む巨人への憎しみを募らせる。845年、超大型巨人が現れ、一番端の壁である「ウォール・マリア」が突破されてしまう。侵入した巨人により目の前で母親を食い殺されたエレンは、巨人をこの世から駆逐することを誓う。

 

 

目次

 

どこまでいっても救いのない話

とにかく人が死ぬ。死ぬ。死にまくる。

最初は巨人だけが敵で、巨人だけを殺せばよかった。思えばここが一番平和だったかも。けれどもそのうち人間同士が争い、やがては世界と争う。争ってばかり、殺しあってばかり。みんな死んでしまう。

 

某有名SF小説のように『〇千名が死んだ』とかではなく、ダイレクトに死が表現される。いくら高い志や熱い理念を抱いていようと、人が死ぬときはいとも簡単に死ぬものだ。

 

シャーキス教官は助けた訓練兵の若者に、「イェーガー派に背くな、いつか立ちあがる日まで自分を見失うな」と言葉を残すが、その言葉の日が訪れたのかどうかはわからない。訪れずに終わったかもしれないし、訪れたが失敗したかもしれない。もしくは遠い未来に成功したかもしれない。若者を導いたシャーキス教官だが、ひっそりとハンジたちを助け、船で亡くなったということを知る者は誰もいないのではないか?

 

この世に生を受けたからには、自分がいたという証を残したいと考える人は多いだろう。この世界にそれなりの痕跡を残したり、自分が存在する意味を見出したいと、人々は日々足掻く。

 

だけど実際は、多くの人が「その他大勢」もしくは「名もなき人」として消えていく。いつ死んだのか気づかれなかったり、そもそもそこに存在していたことさえ気づかれないこともあるかもしれない。

 

リヴァイも、ケニーが訪れなかったら、そこに存在していたことを誰にも気づかれずにひっそりと死んでいったかもしれないのだ。

 

でもそれは現実で、世界のリアルでもある。正直に言うと、この世に救いはない。呑気に待っていれば神のご加護があるなんてムシのいい話はない。きっかけはあるだろう。そのきっかけを掴み、立ち上がって、自らで動かないと「救い」を手に入れることはできない。

 

作中では、それを「戦え、戦え」という言葉で表現される。戦わなければ死ぬ。掴み取らなければ生き残れない。過酷さの度合いは異なるが、漫画というフィクションの中に、我々がふだん目を背けている現実がちらりちらりと覗く。

 

 

正義なんてない

絶対的な正義なんてものはこの世には存在しない。言い換えれば、人の数だけ正義が存在する。

ドラクエのように、勇者がいて、倒すべき悪役がいて、敵を倒したら世界平和になりましためでたしめでたし、なんて物語はしょせん夢物語なのだと突きつけられる。

 

巨人の力を消すために世界を滅ぼそうとしたエレンもエレンにとっては正義。

そんなエレンの心を知らず妄信的に追随した信者もその人にとっては正義。

ユミルの民を根絶しようとしたジークもジークにとっては正義。

そんなジークに希望を見た人もその人にとっては正義。

エルディア人の罪を意識し善良になろうと足掻き続けた人もその人にとっては正義。

パラディ島だけが生き延びればいいという考えに断固反対し立ち上がった人も、その人なりに考え抜いた末の正義。

 

世界は正義と正義のぶつかり合い。自らが正しいを信じて、それを勝ち取るために戦う。それが争いを生み出すのだと突きつけられる。人から争いを消すことはできないのだと、突きつけられる。

 

進撃の巨人』の世界は、そんな正義のぶつかり合いで、だからこそ切なくて苦しい。誰しもがより良い未来を求めて戦っているのに、どうして誰も平和に暮らせないのだろう。

 

 

救いがあるとすれば、それは「愛」かもしれない

こうやって書くととっても陳腐なのだけど。

 

この物語に救いを見出すとしたら、やはり「愛」なんじゃなかろうかと思う。というより、こんなにもツライ世界だからこそ、誰かが誰かを思いやる「愛」であってほしいと私は思いたい。

 

物語中、誰しもが誰かを思いやっていたり、恋心を抱いていたり、愛していたりする。それは恋人だったり、家族だったり、同志だったり。ときにはすれ違ったりもするけれど、誰かは誰かを想い、その想いは他の誰かへと託されていく。

それは悲しいけれども、とても美しいと思った。

 

奴隷だった始祖ユミルは、フリッツ王を愛していた。エレンとジークのどちらを選ぶか迫られたとき、ユミルはエレンを選んだ。王家の人間に忠実であったユミルは、初めて自分自身を認めてくれたエレンに心動かされたと同時に、やはり自分たちの子孫、自身と愛したフリッツ王との子どもたち=ユミルの民を失いたくないからなのだと思った。

 

そして、ミカサが自分の愛するエレンを討ち取ってその亡骸に口づけを交わしたとき、ユミルの心は吹っ切れたのだと思う。本当の愛とは何なのか―—ユミルは巨人の力で王の愛を繋ぎとめることを止めた。そして、この世界の大いなる悲しみであった巨人の力は失われた。

 

ヒストリアの子どもが出てくる。子どもは愛の形だ。そしてミカサは結婚して子どもを授かっている。愛する人を自らの手で葬ったミカサを受け入れて、その傷ついた心を癒してくれた人がいたのだろう。そして幾度かの平和と戦争ののち、再び見たことのある光景が広がる。

 

ひとりの少年が近づく。歴史は繰り返す、という暗示かもしれない。でもその少年がミカサの子孫だったら? ヒストリアの子孫だったら?

 

エレンの魂が宿る木だ。もしかしたら今度はまったく違う物語が紡がれるのかもしれない。それは、我々読者の想像に委ねられているけれど、私は、今度こそ平和が訪れる物語になると信じたい。

 

 

まとめ

現実のツライ世界をとことん突きつけてくれた漫画でした。21世紀になってもなくならない戦争、消えていく命、その根本を考えさせられました。

世界を変えるのはたった一人の巨大な力を持った英雄ではなく、小さな力を持ったひとりひとりの集まり=意思なのだと感じます。

ひとりひとりの考えが集まり、それが力を持ち、大きなうねりとなる。その大きなうねりが、争いではなく、平和に繋がることを夢見たいものです。

 

 

最後にこれだけは言わせて

ここからは完全な私の心の叫び。考察とか一切ないので興味ない方はスルー。

分量が多すぎやしないかって? いや、当たり前だろ(真顔)。

 

というわけで、『進撃の巨人』で誰が一番好きかといわれると、ハンジさん一択。ハンジさん好き。ハンジさんラブ。ハンジさんマジリスペクト

そもそも調査兵団大好き。エルヴィンやリヴァイ好き好き。でもハンジさんが一番好き。

漫画のなかでは巨人やらアッカーマンやら、ついでに頭がいいとか頭がキレるとか人を見る目がハンパないとかこいつ名探偵かというような人間離れした連中がわんさかおりますが、そのなかではわりと普通?寄りで、悩むし愚痴はこぼすし、けれども決して諦めないというめっちゃカッコいい女性です。巨人マニアだし、拷問もできるし、治療もできるし、料理もできる! なーんでもできちゃう変人です。

 

なので、退場シーンは号泣でしたよ、号泣。

世界を救うためにひとりで巨人に立ち向かい、巨人の美しさにため息をつき、そして散る。「じゃあな、ハンジ。見ててくれ」なーんて、リヴァイのセリフにただただ号泣。

最後の最後まで飛空艇を気にして、そしてエルヴィンたちに再会して……やっぱり愚痴をこぼして。。。涙笑涙笑(←どっちかにしろ)。「ゆっくり話をきくよ」だなんて、ハンジの苦悩なんて365日あっても語りつくせないわよ!

 

私の中で死ななないであろうキャラクターとして、ミカサ、アルミンが筆頭(こいつら死んだらダメだろ)で、次席にリヴァイ(アッカーマンだから)、ハンジは微妙、という立ち位置だったのですが、やっぱり退場しちゃったかあー。ハンジさんには生きててほしかったな。でも散々苦悩してたから、めんどくさいことは後進に道を譲って地獄から解放でも良かったのかな。生きてたら絶対アルミンたちとめんどくさい会議とかするハメになりそうだしね。

 

ちなみにエレンは途中から私の中で死亡認定していました。そうしないとこの大風呂敷を広げまくった物語は収束しないでしょ。

 

そうそう、単行本に収録されているニセ次巻予告。ハンジさんが好きすぎた私はニセの予告を真に受けて、ほんっっとに楽しみにしてたんですよ。そしたら「え? あのエピソードなくない?」と……。ニセモノだと気づいてめっちゃガッカリしました。私のドキドキ返して。

 

ニセの次回予告の流れで、『進撃のスクールカースト』の話を。

マルコの回が秀逸。そして始祖ユミルが出てきたあたりから、本編の深刻さと相まってシュールさ爆発。笑いました。こういうノリ大好きです。

 

そしてノリといえば。

漫画を読んでいたちょうど同じ時期に、YouTubeでアニメ『進撃の巨人』の1stシーズンが全話無料公開されていたので見ていました。そしたらね、「あなたへのおすすめ」で日清と『進撃の巨人』のコラボ動画が出てきて……やべえわこれ。あまりにもぶっ飛びすぎてて楽しくて、一週間くらい毎日飽きずに見てました。

こういうノリは大好物です。世界観ぶっ壊すので苦手な人もいるかもしれませんが、私はどんどんやってほしい派。全力で企画を作って全力で動画を作って全力で声を吹き込んでくれた全スタッフに心から感謝します。

 

いやーハンジさん好き。こんな人が上司だったら、全力でついていきます。

 

以上、私の心の叫びでした。

 

  • 読書期間:2022年12月28日~2023年1月8日
  • オススメ度:MAX
  • 読んだ後のロス感:強
  • 続編があったら読みたい度:強
  • アニメへの期待:すっごいキレイだしOPカッコいいよ!